ペンギンの生態

コウテイペンギンの秘密に迫る!南極の王様の驚きの生態と子育て

コウテイペンギン (Aptenodytes forsteri) は、世界中のペンギンの中で一番大きなペンギンです。南極(なんきょく)という、とても寒い場所で暮らしています。南極は一年中ほとんど氷におおわれています。コウテイペンギンは、この寒い場所で、赤ちゃんを育てたり、ごはんを食べたりと、すべての生活をおこなうことができる、とってもすごい鳥なのです。

この記事では、コウテイペンギンの体のつくりや、どこに住んでいるか、どうやって赤ちゃんを育てているか、何をごはんとして食べているかなどを、くわしく説明します。


コウテイペンギンってどんなペンギン?

なかまわけ(分類)

  • コウテイペンギンは、ペンギンのなかまです。
  • 鳥のなかまだけど、空を飛ぶことはできません。

体のとくちょう

  • おおきさ: 大人になると、たてが1メートルから1メートル30センチくらいになります。人間の子どもと同じくらいの大きさです。
  • おもさ: 重さは、おすペンギンで22キログラムから45キログラム、めすペンギンで18キログラムから40キログラムくらいです。おすペンギンの方が少し大きいことが多いです。ごはんを食べない時期(じき)には、体のおもさが半分くらいに減ることもあります。
  • はねの色: せなかはこい青色がかった黒色で、おなかはまっしろです。耳のあたりからむねにかけて、きれいな黄色やオレンジ色の模様(もよう)があります。首のうしろにも、黄色からオレンジ色の線があります。
  • あしと足: 短くてじょうぶなあしをもっていて、体のうしろの方についています。足には「水かき」というものがあり、水の中をすいすい泳ぐのに役立っています。
  • くちばし: 長くて、少し曲がっています。上のくちばしは黒色で、下のくちばしの根元(ねもと)のほうはオレンジ色です。

どこに住んでいるの?

コウテイペンギンは、南極大陸(なんきょくたいりく)の海に面した氷の上で暮らしています。いつも氷の上で生活していて、岩がたくさんある場所(岩場)に行くことは、めったにありません。広い氷の上に、たくさんのコウテイペンギンが集まって、大きなグループ(コロニーといいます)をつくって生活しています。毎年、だいたい同じ場所に集まることが多いです。


赤ちゃんを育てるすごい方法!



コウテイペンギンは、とっても寒くて厳しい(きびしい)南極の冬の間に、赤ちゃんを育て始めます。これは、ほかの動物たちとはちがう、とてもめずらしい方法です。

  • 赤ちゃんを産む時期: 南極の秋にあたる、3月の終わりごろから4月の始めごろに、たくさんのペンギンたちが集まってきます。これは、赤ちゃんが育って、自分でごはんをとれるようになるのが、夏の暖かい時期にあうようにするためです。
  • お見合いとパートナー探し: ペンギンたちは、鳴き声を出したり、体をゆらしたりして、自分にぴったりのパートナーを探します。一度ペアになったら、とても仲良しになりますが、来年も同じパートナーとペアになることは少ないです。
  • たまごをあたためる(抱卵:ほうらん): 5月の終わりごろから6月の始めごろ、南極が一番寒くて暗い冬の間に、メスのペンギンはたまごを1つだけ産みます。このたまごをあたためるお仕事は、ほとんどオスがします。オスは、足の甲(こう)の上にたまごを乗せて、おなかの「抱卵嚢(ほうらんのう)」という温かい袋(ふくろ)で、たまごを冷たい氷から守ります。オスはこの間、なんと2ヶ月以上もごはんを食べずに、たまごをあたため続けます。ごはんを食べないから、体重が半分くらいに減ってしまうこともあります。メスはたまごを産んだ後、ごはんを探しに海へ泳ぎに行きます。
  • 赤ちゃんが生まれる(孵化:ふか): 7月の終わりごろから8月の始めごろに、たまごからかわいい赤ちゃんが生まれます。赤ちゃんが生まれる少し前に、ごはんを食べに行ったメスが戻ってきて、胃の中にたくわえていた、少し消化したごはんを吐き出して、赤ちゃんにあげます。それからは、お父さんとお母さんが交代で、ごはんを探しに行ったり、赤ちゃんを育てたりします。
  • 「クレイシ」をつくる: 赤ちゃんが少し大きくなると、寒さから体を守るために、たくさんの赤ちゃんペンギンが集まって、大きなかたまりをつくります。これを「クレイシ」といいます。クレイシに集まることで、みんなで体を温めあうことができます。親のペンギンは、この間に交代で海にごはんを探しに行きます。
  • 大人になる準備: 12月の終わりごろから1月の始めごろになると、赤ちゃんペンギンの体には、水をはじく大人と同じような羽が生え変わります。こうなると、自分でごはんを捕まえられるようになるので、親から離れて海へ泳ぎに行きます。

ごはんのとりかた

コウテイペンギンは、水の中にもぐるのがとても得意です。

  • もぐるのがじょうず: ふつうは水深50メートルから200メートルくらいまでもぐりますが、もっと深い水深500メートル以上まで、そして20分以上ももぐっていられることもあります。
  • 何をごはんとして食べるの?: 主に(ちいさな魚のなかまなど)や、エビに似た「オキアミ」という生き物、そして「イカ」などを食べます。たくさんのペンギンがいっしょに泳いで、魚を追い詰めて捕まえることもあります。
  • 体の中の工夫: 長くもぐっていても、息が苦しくならないように、体の中に酸素(さんそ)をたくさんたくわえることができるなどの特別な工夫がされています。冷たい水の中でも体温(たいおん)が下がらないようにする工夫もされています。

寒い南極で生きるためのひみつ

コウテイペンギンは、あの寒い南極で生きていけるように、たくさんのすごい体のつくりや行動のひみつを持っています。

体を温める工夫

  • ふかふかの羽(はね): 羽がたくさん生えていて、空気の層(そう)をつくるので、体温が外に逃げません。
  • あつい脂肪(しぼう): 皮膚(ひふ)の下には、厚い脂肪(あぶら)の層があります。これが服のように体を温めてくれます。
  • 足のひみつ: 足はいつも冷たい氷の上にいますが、足の血管(けっかん)には特別な仕組み(しくみ)があって、体の熱が足から逃げないようにしています。

みんなで温めあう(ハドル)

繁殖期(はんしょくき)には、オスたちがみんなでぎゅうぎゅうにくっつきあって、大きな「ハドル」という集まりをつくります。外側のペンギンが風や寒さから中のペンギンを守り、みんなで体を温めあうことができます。とってもかしこい方法です。

赤ちゃんを育てる時期の工夫

南極で一番寒い冬の間にたまごを産むのは、赤ちゃんが成長して、自分でごはんを食べられるようになるのが、春から夏にかけての、ごはんがたくさんある時期に合うようにするためです。

体の中の特別な力

長い間ごはんを食べなくても生きていけるように、体の中に脂肪をためておいたり、深くもぐっても大丈夫なように、酸素を効率よく使う仕組みを持っていたりします。


コウテイペンギンをまもろう!

コウテイペンギンは今、地球温暖化(ちきゅうおんだんか)という大きな問題で困っています。地球が暖かくなって、コウテイペンギンが住んでいる氷が溶けて(とけて)しまっているのです。氷は、コウテイペンギンが赤ちゃんを育てたり、休んだり、ごはんを探したりするための、とても大切な場所です。氷がなくなると、コウテイペンギンは生きていけなくなってしまうかもしれません。

また、人間が魚をたくさん獲(と)りすぎて、コウテイペンギンのごはんが減ってしまうことも心配されています。

世界中の人たちが、南極の自然や生き物を守るためのルールを決めていますが、地球温暖化を止めるために、もっともっと努力することが必要です。


おわりに

コウテイペンギンは、南極のとても厳しい場所で、いろいろな工夫をしてたくましく生きています。その姿は、私たちにたくさんのことを教えてくれます。地球温暖化が進むと、コウテイペンギンが生きるのが難しくなってしまいます。コウテイペンギンがこれからも元気でいられるように、みんなで地球の環境(かんきょう)を守るためにできることを考えていきましょう。